ひさしぶりの教育心理学のコーナーです。
テーマは『やる気』
もうちょっと専門的な言葉を使うと『動機付け』です。「やる」ための「動機」を与える動機付けです。
学校の先生や保護者の方ならみんな悩むであろう『やる気の出させ方』です。
なぜその行動をするのか
前提を考えておきましょう。人はなぜ行動をするのか。
簡潔に言えば、『やったら得があるから』または『やったら嫌なことを避けられるから』です。
例えば、歯磨きをする理由を考えてみましょう。
「虫歯にならないように」→「虫歯という嫌なことを避けられる」
「口の中のねばつきが気持ち悪いから」→「ねばつきという嫌なことを避けられる」
「歯が綺麗だとモテるから」→「モテるという得があるから」
とかでしょうか。いろんな行動に対して考えてみましょう。
ゲームをするのは「楽しいという得があるから」「嫌なことから現実逃避をしたいから」などなど。
ご飯を食べるのは「美味しいという得があるから」「空腹という不快感を避けたいから」などなど。
その動機が得を得るためなのか、嫌なことを避けるためなのかによって取り組む姿勢がポジティブなものかネガティブなものなのか変わってきます。
2つの動機付け
動機付けには2種類あります。
やる理由が外にある外発的動機付けと理由が内側にある内発的動機付けです。
結論から言いますと、外発的動機付けでも最初は悪く無いのですが、最終的には内発的動機付けを目指しましょう。
やるようになればどちらでも良いじゃ無いかと思うのですが、外発的動機付けは行動と結びつかない上に、達成できないと損をする、というネガティブイメージにつながり、最悪嫌いになってしまいます。
短期的には外発的動機付けで促し、内発的動機付けができるように誘導していきましょう。
では詳しく、外発的動機付けと内発的動機付けについて確認しましょう。
外発的動機付け
外発的動機付けは『やる理由が自分の外側にある』動機付けです。
例えば
- テストで良い点数を取ったらお小遣いをもらえる・褒められる(ポジティブな外発的動機付け)
- テストで悪い点数を取ったら怒られる・罰がある(ネガティブな外発的動機付け)
怒られる・罰があるのを回避したい、というのも外発的動機付けです。
勉強だけではありません。罰が多いのは体育会系の部活でもありますよね。エラーしたら校庭何周、みたいな。
好きなはずのスポーツが嫌いになるやつ。最近は減ったんでしょうか。どうなんですかね……。
それはそれとして。頑張ったら『良いことがある』だから頑張れるというものです。
子どもの勉強やお手伝いだけでなく、大人でも使いますよね。今日頑張ったご褒美のケーキとかビールとか。
人間ですから、常に崇高な目標のために頑張っているわけでも無いでしょう。短期的なご褒美が必要なのは大人も子どもも変わりません。
内発的動機付け
外発的動機付けは短期的な報酬と罰のため、成果がわかりやすいのが特徴です。
またの機会に紹介しますが、フィードバックは早ければ早いほど効果的です。
頑張ったという行動に対して、即時的に効果のある報酬や罰というのは、形になりやすいこともあり、想像しやすいため、フィードバックとしてはとてもわかりやすいものです。
しかし、一方で、努力と報酬や罰が関係のない場合、その努力は継続的なものになりません。
そればかりか、報酬や罰がなければその努力をしなくなります。
罰に至っては、努力の行為が罰と結びついてしまうため、努力から避けようとすることもあるでしょう。
したがって、外発的動機付けを長期間用いることはあまり良い影響を与えないことがわかります。
そこでもう一つの動機付け、内発的動機付けです。
内発的動機付けは逆に『やる理由が自分の内側にある』動機付けです。
例えば、
- 〇〇大学に行きたいから、将来〇〇になりたいから勉強を頑張る(ポジティブな内発的動機付け)
- 留年したくないから頑張る(ネガティブな内発的動機付け)
- 勉強が楽しいからやる(欲求からくる内発的動機付け)
などでしょうか。上二つはもしかしたら外発的動機付けに被る部分もあるかもしれません。
下の欲求からくる内発的動機付けは一旦置いて上2つから説明します。
短期的な視野ではなく、長期的な視野に立って、自分の将来のために何か行動を起こすというのが外発的動機付けとは異なる点でしょうか。もちろん、長期的な外発的動機付けと位置付けることもできますが、一番の違いは文字通りそれが『外(誰か他の人)から与えられる理由』なのか『自分で見つけて達成しようとする理由』なのかです。
ですので短期的・長期的かは本来外発的動機付けか内発的動機付けかに関係しませんが、そうなることが多いということでここではそう紹介しています。
将来の目標に向かって頑張るというのは言い換えれば『自己実現』です。
「こうなりたい」という目標に対して努力するわけですから、他の人に左右されることはありません(目標が変わることはあるかもしれません)
サボればその理想から離れてしまうわけですから、一旦努力から離れてしまってもまた挑戦できます。
なりたくない将来を回避するための努力もネガティブではありますが、内発的動機付けでしょう。
欲求の内発的動機付け
さて、一旦横に置いた、『楽しいからやる』というパターンについて見ていきましょう。
実はこれが本来の内発的動機付けなのかもしれません。
『楽しいからやる』に勝る動機付けはありません。心から望んでやっているわけですから。
欲求には『楽しい』だけではなく、人によっては『誰かの役に立ちたい』『恩返しがしたい』などもあるかもしれません。
※お礼を期待すると外発的になります。
誰が何を言おうと「自分がやりたいからやっているんだ」と言えるのであれば、動機付けとしては完璧でしょう。
勉強も生徒から『楽しいからやる』と言ってもらえればこれほど教師冥利に尽きることは無いでしょう。
まとめ
外発的動機付けと内発的動機付けについて、説明してきました。
さらに外発的動機付けと内発的動機付けにはポジティブなものとネガティブなものがあり、究極の内発的動機付けとして欲求の動機付けがあるということでした。
下図のような図を提案します。
外発的動機付けは、短期間で即時的にフィードバックがあるため、効果を実感しやすいですが、その反面、フィードバックのために行動する習慣がついてしまい、報酬や罰がなければ、行動しなくなる可能性があります。
そのため、一時的な外発的動機付けから内発的動機付けに移行させていく必要があります。
内発的動機付けは、人の心の奥深くに作用する必要がありますから、外からの力ではなかなか働くのは難しいでしょう。
とはいえ、縁がなければ人の心は変わらないのもまた事実。魅力的な授業を研究したり、その子に応じた将来のビジョンを話してあげるなど、諦めずにフォローしていただければ幸いです。
そうそう、動機付けの一つに「〇〇先生のために頑張る」という子がいました。(私では無いです笑)
「いつも優しく教えてくれる〇〇先生に頑張った姿を見せたい」とのことです。泣かせるじゃねーか。
そんなことを言ってもらえる教員になりたいものですね。
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