怒鳴り指導の弊害と代替案について

先生向け

大きな声を出して、脅迫的な指導をする『怒鳴り』。

みなさんも受けたこと、周りで聞いたことがあるのではないでしょうか。

あまりいい気はしませんね。

社会でやれば確実に『パワハラ』です。

なぜ学校ではなくならないのでしょうか。

今回はその怒鳴りに対して、『なくならない理由』『しない方がよい理由』『代替案』について考察してみました。よければご参考になさってください。

怒鳴り指導とは

まず怒鳴り指導を定義します。

大きな声を出して、相手を威圧することで相手をいいなりにさせる指導

と、ここでは定義します。定義からしてバイアスはかかっている気がしますが、実際そういう側面があることは事実でしょう。

場合によっては実際に不利益を与える罰を脅しとして付け加えるときもあります。

昔から頻繁に行われている指導で、近年は体罰とともに減少傾向にありますが、それでもやはり根強いのが実態です。

怒鳴ることの利点

さて、なぜ教員は怒鳴る人は少なくないのでしょう。

理由は簡単です。

手っ取り早く言うことを聞かせる事ができるから

です。

つまり、時間もかからず、お手軽な指導な上に、やった気になれる指導法だということですね。

よく効くと、生徒は表面上いい子になります。

怒鳴ることの弊害

では怒鳴る指導のデメリットはなんでしょうか。

反発心が芽生える

あなたは人から怒鳴られたことはありますか?

その時に、

あぁ、その通りだな、気を付けよう

と思いましたか?

思いませんよね??

私だったら

なんでそこまで言われなきゃいけねーんだよ、おめーはどうなんだよ!

とか思ってしまいそうです。人間というのは年齢に関わらず、自己正当化したいものですから、

自分が攻撃されていると、自分を守るために自分を正当化し、相手を攻撃する考えに至ります。

つまり、反省を促すことはできません。

結果、行動が悪化したり、意味がないことがあります。

また、構ってほしいからイタズラをする、という子は一層行動を促してしまうことにもなります。

話を聞いてもらえなかったという不満が残る

次に、事情があったにも関わらず、その事情を聞いてくれなかったことに不満が募ります。

例えば、『昨晩、お腹が痛くなり、夜眠れなかったので、睡眠不足で授業を居眠りしてしまった』という生徒も、

『授業中に居眠りしていた』というだけで怒鳴られてしまうと、反論の余地がありません。

怒鳴るという行為は『相手に反論を許さない』指導です。

相手の問題行動の裏側に何があったのか、事情を考えることも教育者の務めではないでしょうか。

恐怖によって行動が制限される(当事者以外も)

他にも、怒鳴られることが常態化すると、怒鳴られたくない思いから『何かあってもひたすらに隠そうとする』『相談ができなくなる』『自由な発想や行動がとれなくなる』というデメリットがあります。

先日こんなツイートが話題になっていましたね

怒鳴る指導は明確なパワハラです。

怒鳴る指導を受け続けると生徒の行動基準は『怒られる』か『怒られないか』になります。

私自身も、以前高校に進学してきたばかりの生徒に

こんなことを相談すると怒られると思った…

と言われて悲しかった経験があります。

相談しに行って怒る先生ってなんなんでしょうね。

ちなみに、怒鳴ることは、対象生徒以外にも大きな影響があります。

怒鳴られたり、恥ずかしい思いを共感的に受けてしまう人がいます。

そういう特性の人でなくても、近くで怒鳴られていると、空気が凍って嫌ーな雰囲気になりますよね…。

怒鳴った教員や怒鳴られた生徒が嘲笑の対象になる

こんな経験はないでしょうか。

怒鳴られている生徒の周りで、クスクス笑いが起こる…。

それを見咎めて、周囲にまで怒鳴り散らかす…。

よくある光景じゃないでしょうか。

先生方、知ってます?

怒られ終わったら、みんなで笑いあってますよ。

怒った先生の面白かったところや、怒られた生徒のどんくさいところなど、怒られた内容なんて全然振り返りません。

それって指導した意味があるのでしょうか。生徒に話のネタを提供しただけになってますよ。

私はしっかり指導していますっていうただの実績づくりになってませんか?

怒鳴る指導は、効果がないどころか、教員としての信頼まで失う行為であることを自覚しましょう。

怒鳴るべき唯一のシーン

さて、ここまで怒鳴る指導のデメリットを挙げてきましたが、私としては唯一怒鳴っても良いシチュエーションがあると思っています。

それは

命がかかっている場面

です。

怒鳴ることは即時的に相手を止める手段です。その後の反発などデメリットが大きいものですが、人の命(自分自身に対する場合も含む)がかかっている時は、その後のデメリットなんて言っている場合ではありません。即時的に止める必要があります。時には嫌われようが何だろうが止めないといけないときはあります。

私は怒鳴ることはそれくらいの緊急性がある場合にしか使うべきではないと考えています。

代替案

とは言え、

そんなこと言ったって、怒鳴り無しであのやんちゃな子たちを指導するなんて、理想論でしかないよね、現実そんなうまくいかないって

とお思いの先生方もいらっしゃるでしょう。

学校によっても実態が違いますから、一概に言えるものではありませんが、いくつか怒鳴らなくても真剣感を出す指導方法をご紹介したいと思います。

懇談室や生徒指導室に呼び出す

教室や廊下など、他の生徒から目に付くところで指導するのは、見世物になり、その生徒のプライドを傷つける行為になります。

また、『呼び出される』という特別感を出すことで、それだけで「ヤバい…!」と思わせる効果があります。そう思ってもらえれば、あとは比較的やさしく説得するだけでも聞いてくれることがあります。

ただし、密室になると、人権的な問題が発生することがありますので、ドアを開けておいたり、他の先生にも入ってもらったりと、工夫は必要です。指導を録音しておくのも良いかもしれません。

しかめっ面をする

表情から真剣さを訴える手段です。目は口ほどにものを言う、ということわざの通り、言葉を荒げなくても、真剣な目で生徒を見ることで、生徒も「先生怒ってる…」と感じます。

いつもと違う迫力を出すことができれば、生徒指導は怒鳴らなくてもできるようになります。

私はまだまだですが、私の恩師がとても上手でした。

ゆっくり話す

威厳を持たせるためには、何も言葉を荒げる必要はありません。どっしりと構え、大人の余裕を見せましょう。イメージはビジネスドラマの嫌味な社長です(笑)

質問をする

「あなたのやったことで他の人がどれだけ迷惑したか、分かってる?」などと質問することも指導です。あくまでゆっくりと、です。怒鳴り指導はその間耐えていれば終わりますので、ただじっと耐えて、終わったら「やれやれ」という子もいます。

が、質問しながらであれば、自分の考えを説明したり、反省を述べさせたりすることで自分の行いに目を向けさせることができるでしょう。

くれぐれも返答に対して、激昂することがないように気を付けましょう。以降自分の意見が言えなくなってしまいます。

何度も注意する

生徒指導には根気が必要です。人間すぐには変われません。外からの力であればなおさらです。

どうか時間をかけることから逃げないで、根気強く向き合っていきましょう。

あくまで教員がすべきは『指導』であって『調教』ではありません。

子どもが変わることを信じましょう。

Iメッセージで伝えるor淡々と事実を語る

Iメッセージはご存知でしょうか。「私は~~と思う」というように、主語を「私」にして、相手に訴えかける方法です。ここでは「君がそんなことをして私は悲しかったよ」というように使います。小学校ではよく使うテクニックではないでしょうか。

情に訴えることも手段のひとつです。

一方、反抗期の子には

知らんがな

で流されてしまいかねませんので、そういう場合は

そういうことばかりしてると、人から信頼されなくなっちゃうよ

のように客観的事実を述べるのもひとつの手です。その子のことをよく知り、その子にとってどんな言葉かけが一番有効なのか考えましょう。

  • 人が喜ぶことが一番効く子
  • 人が悲しむことをしないということが一番効く子
  • 損得勘定が一番効く子

いろいろあります。生徒指導はその子どもの人生に向き合うことでもあります。その子のことを知らずして指導はできません。普段から接して生徒・児童理解に務めましょう。

まとめ

怒鳴り指導のデメリットと対策について説明していきました。

自分が怒鳴られたときのことを考えてみましょう。

怒鳴り指導は、子どもの反発心を煽ります。また、自主的な活動を抑圧します。

怒鳴った直後はおとなしくなりますが、それは表面だけであり、デメリットが大きい指導法です。

指導は必要ですが、怒鳴る必要はありません。むしろパワハラなので止めるべきです。

本当に刺さる指導とは『相手のことを本当に理解して、その人のために叱る指導』です。

普段の生徒理解を活用し、ゆっくりと落ち着きをもって、真剣さを出せば、伝わります。

1回で伝わらないこともあるでしょうが、何回でもやるのです。

皆さんと子ども達がよい関係を築くことができますよう、応援しております。

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